Interview 障害者雇用企業インタビュー
雇用するまでの流れや、障害者雇用によって企業がどのように成長できたかについて、障害者が活躍する企業にインタビューを行いました。
企業規模
障害種別
内容別
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ショートタイムワークの導入で多様な方の就労機会を創出し、企業や地域における人材の有効活用を実現
ソフトバンク株式会社情報通信業- 設立年
- 1986年
- 代表者
- 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
- 従業員数
- 18,889人(2024年3月31日時点・単体)
- 雇用障害種別
- 全体で496名(2024年6月時点)
【内訳】
肢体不自由 34%
聴覚障がい 30%
内部障がい 22%
精神障がい 8%
視覚障がい 6% - 事業内容
- 移動通信サービスの提供、携帯端末の販売、固定通信サービスの提供、インターネット接続サービスの提供
- インタビューに参加した障害当事者の業務内容 ショートタイムワーカー Aさん
- 社内システムを使った検収や請求書処理、請求書等のPDF化、郵便物受け取り業務など
- ソフトバンクはどんな会社ですか?
- ソフトバンクでは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、通信キャリアを超えたさまざまな挑戦を事業を通じて行ってきた会社です。
その過程において様々な企業の合併統合を経て拡大してまいりましたので、過ごしてきた会社の文化自体が違う社員が一緒に働く経験をしてきております。入社の経路も、新卒、中途、お話ししたような合併や統合を経て入社した社員がそれぞれ3分の1ずつほど存在しており、様々な違いを超えてシナジーを出すということを日常の業務の中で経験してきています。
その様な背景から、多様性に溢れた会社であるということをご想像いただけるのではないかと思います。
- ソフトバンクの障害者雇用にはどのような特徴がありますか?
- 正社員の雇用においては、障害には配慮をするけれど、仕事においては遠慮しないことをポリシーにしております。そのため、昇進昇格、給与の条件などはすべて、障害のあるなしにかかわらず同一です。
そのような環境で働くからこそ、障害には配慮して同じフィールドに立っていただくということを大切に考えております。
そして、働きやすさを提供するために、在宅勤務の制度やスーパーフレックスといった制度は全社員共通で使用できるようになっており、障害のある社員もご自身の体調や通院状況などに合わせて使用できるようになっております。
- ショートタイムワークの概要、始めたきっかけを教えてください。
- ショートタイムワークは、何らかの理由によって長時間の勤務が難しく、働く機会を得られなかったという方が週20時間未満という短時間からの就労環境を整えることで、「共に働く」を実現できるダイバーシティな働き方です。
それぞれの特性や経験を生かして働くことで、より多様な方の就労機会を創出し、企業や地域においても人材の有効活用が期待できます。
ショートタイムワークの仕組みについてご紹介します。ショートタイムワークは、まず企業の中にある業務を棚卸しし、その業務を他の方に頼める業務や、実施者が苦手としている業務を切り出します。そして、これらの業務ができる方で短時間から働けるという方に実施していただく仕組みです。
始めたきっかけについてご紹介します。
ソフトバンクでは、2009年から、障害のある子どもたちが生活や学びの場面でどのようにICTを活用するといいか、学校の先生とともに検討し、事例を創出する魔法のプロジェクトという取り組みを行っています。この取り組みを通じ、学習の場でICTの活用が広がってきたと感じる一方、就労において壁のある方がまだまだいるということが分かりました。主要な壁の一つとして、長時間かつ何でもできることが前提となっている日本のメインストリームの働き方だけではなく、短時間から特性や経験を活かして働ける環境を整えることで、共に働ける社会づくりが必要であると感じ、2016年からショートタイムワークを始めました。
- 社内でのショートタイムワークの体制や業務について教えてください。
- ショートタイムワークで障害のある方を採用する場合、部署が求人票を作成し、CSR本部を通じてつながりのある支援機関に求人票を送付し、支援機関を経由してご紹介をいただいています。支援機関には応募や面接の際にサポートいただき、入社後も本人の継続した支援をお願いしており、本人の支援が途切れることがないようにしています。ソフトバンクには専門的な知識を持つメンバーがいるわけではありません。そのため、支援機関と共に継続的なサポートができるよう、ショートタイムワークについてご理解をいただいている支援機関からのご紹介のみとしております。
これまでにショートタイムワークでの就業者数は延べ約80名となっています。その内60名ほどが障害の理由による就業で、その他に子育てや介護、闘病などの理由でショートタイムワークで働いている方がいます。障害の種別は精神障害、発達障害、難病のある方など様々です。短時間から、実施業務が見えているという状況で働けるため、長時間働くことへの難しさを感じている方にも手を挙げていただいています。
業務内容は各部署から依頼のあった業務となります。例えば、資料のPDF化や郵便の受け取り・発送業務、書類整理などの現場作業、もしくはフローが確定している業務でデータの入力やアノテーション作業、データの集計などもあります。他にも特定スキルが必要な業務として、翻訳の業務やプログラミング、イラストレーターなどを活用した業務など実施いただいている場合もあります。
どのように任せる業務を会社の中で探しているかという部分ですが、最初はいろいろな部署に「ショートタイムワーカーを受け入れてもらえませんか?」という形で動いておりましたが、これだとあまり長続きがしませんでした。そのため、「ショートタイムワークを取り入れたい部署はありますか?」という風に全社にお声がけをしたところ、業務を抱えている部署や担当者、管理職の方からご相談がありました。現在は全社に向けて業務仕分けの実施方法を展開しています。部署で業務仕分けをした後、他の人にお願いしたい業務や、部署の担当者が苦手とする業務などを求人票にして出していただいています。
- ショートタイムワークに取り組み始めて、感じている効果などがあれば教えてください。
- 短時間から自身の特性やスキル、経験を活かして働いていただけるため、社内の生産性にも寄与しています。ショートタイムワーカーが、部署のメンバーの一人として働いていることで、インクルーシブな環境も醸成されており、相互理解が深まっていると感じています。部署からは「障害を持つ人への理解が深まった気がします」「全く問題なく一緒に働いてくれています」といった声もあります。
ワーカー自身も収入や働く機会を得られるということとともに、「今までは支援側と支援される側とはっきり分かれていましたが、ショートタイムワーカーとして働いて、初めて対等になった気がしました」といったような声もいただいています。
社会にとっても、労働者数の増加とダイバーシティの推進につながっていると考えています。
- ソフトバンクで働いてみて、いかがですか?
- 私は生まれつき両膝から下の部分が欠損していて、普段は義足をつけて生活しています。義足をつけているので、長時間の移動や満員電車に不安を感じていましたが、在宅勤務やスーパーフレックス制度を活用して、通勤時も電車に座れる時間帯で出勤できるため、足への負担が少なく通勤できるのがありがたいなと思っています。
また、障害の有無に関係なく一人の社員として評価してくださるため、やりがいを持ちながら仕事ができています。
- ショートタイムワーカーと一緒に働いてみて、いかがですか?
- 一緒に働いたワーカーさんが英語のスキルを持っていたため、当時はサービス提案書の英訳対応をお願いしていました。いつも丁寧に確認しながら仕事を進めてくださっていたので、とても助かっていました。自分の持つスキルを生かしながら、無理のない範囲で働けることが、ショートタイムワークという働き方の良い点だと思っています。今後も働き方の選択肢としてあるべきだと思います。
- ショートタイムワーカーの方のコメント(※こちらは記事にのみ掲載しております)
- 「私はここに就労する前、就労を支援する事業所に通っていました。そこで私は、パソコンの資格を何個か取得しパソコンの知識を生かした仕事がしたい、また一定の時間人が多くいる環境に苦手意識があったこともあり仕事が長く続けられる様短い時間から働ける仕事を探していました。そんな時に、就労を支援して下さる事業所の方からこんな仕事の求人があるよとご紹介頂き、現在のショートタイムワークを始めました。
そして現在は、メールや郵便で送られてくる請求書や口振書のPDF化、フォルダへの格納、社内システムを使った検収や請求書提出といった業務を主に行っています。そしてこのショートタイムワークをしたことによって、働くことへの大切さや楽しさ、人がいる環境で一定の時間居ることへの苦手意識も以前より改善され、コミュニケーションもある程度取れる程に自分を変えることができました。
- ショートタイムワークの今後の展開について教えてください。
- 2024年からは、障害のある方の雇用について、法定雇用率の換算対象に週10時間から20時間未満で働く障害のある方も含まれるようになりました。企業が働き方を柔軟にすることで、働く機会を求める人が増える、そんなタイミングであると考えています。
今後も一緒にショートタイムワークの取り組みを進めていただける企業様を増やしていきたいと考えています。ソフトバンクでは、このような働き方を社会全体に広げていくということを目指し、企業や支援機関とともに事例共有などを行うショートタイムワークアライアンスの活動も行っており、このような働き方が当たり前の選択肢の一つとなるよう取り組みを進めていきます。
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得意な作業に特化し、高い集中力とパフォーマンスを発揮していただくことでプロジェクト全体の開発効率が向上
東横システム株式会社情報通信業- 設立年
- 1982年
- 代表者
- 代表取締役 山﨑 孝助
- 従業員数
- 140名(2023年4月時点)
- 雇用障害種別
- 精神障害者2名、発達障害者1名
- 事業内容
- システム及びソフトウェア受託開発(組込み/アプリ/Web)、IT/OA機器販売職及びIT保守サポート職
- インタビューに参加した障害当事者の業務内容 システム開発部門 片野さん
- これまでに、ユーザーインターフェース(UI)の開発や、技術研修、テスターを経験している。これからは、ホームページ制作などWEBデザインのキャリア能力を生かした業務での活躍も期待されている。
- 東横システムはどのような会社ですか。
- 東横システム株式会社は、「独立系」「大手企業のソフトウェア受託開発」「設立以来ずっと黒字経営」を強みとして、東京都大田区の地で、42年目を迎える中小企業です。新卒採用にこだわり、30代、40代の社員層が会社の中核を担い、次代に向けた柔軟な立ち回りができる組織となっていることが特徴です。そのため、人事/業務/福利厚生等でも社員のために合理化を図ることを得意としています。人事をする上でのキーワードは『適材適所』で、今の時代だからこそ組織力アップに効果を発揮しています。
事業内容はソフトウェア開発とIT/OA機器販売事業の2つです。ソフトウェア開発では、組み込みからWEB/アプリと幅広い領域を手がけます。大手企業の受託開発を上流〜下流工程まで一貫して自社内で行っておりますので、その開発環境を活かした継続的な育成が特徴です。
もう1つのIT/OA機器販売事業は、各業界の中小企業がお客様です。PC、サーバー、ネットワーク機器の販売だけでなく、購入後の保守契約も結び、長期的なサポートを提案をいたします。
- 障害者雇用のメンバーが取り組んでいる業務について教えてください。
- 弊社は既に障害者手帳を取得の正規雇用の3名を雇用しております。
2名は精神障害、そしてその2名ともシステムエンジニアとして新卒採用いたしました。
1名は入社10年目となり、開発の現場に設計から実装フェーズを任されるほどに実力をつけております。もう1名は総務に配置転換以降、体調管理、集中力持続時間の管理のもと、総務のお手伝い、営業部門のお手伝い、例えば伝票作成やパソコンキッティング等を担当しています。マニュアルや指示をもとに正確な作業が実行できる特性を活かしております。この能力を活かし、直近ではシステム開発部門のテスターとしても活躍の場を広げております。
3人目については、発達障害です。学歴、職歴によるWEBデザインのキャリア能力を期待し、昨年中途採用し、システム開発部門に配置いたしました。これまでに、ユーザーインターフェース(UI)の開発や、技術研修、テスターを経験してもらいました。これからは、『適材適所』、キャリアを活かしてもらうため、ホームページ制作を任せようと考えております。
- ニューロダイバーシティに取り組もうと思ったきっかけについて教えてください。
- きっかけは2つです。
1つ目は法定雇用率です。段階的な引き上げに伴い、私たち中小企業も社会の公器としてこの雇用率を達成するための雇用を広げる方針といたしました。
2つ目は、経営、管理監督職側のニューロダイバシティ教育です。今の世の中がそのような取り組みをしていかなければならない時代になっているということをキャッチし、体制をつくることが企業の成長の伸び代であると捉えています。経営、管理監督職側の私たちが、障害についての偏見や先入観の物差しではなく、きちんと学び、理解した上で、組織に必要な一員としてマネジメントしていく必要性を実感しています。
- 障害者雇用のメンバーが働きやすい職場環境づくりのため、重視していることは何ですか。
- 障害特性、性格に合わせた対応を重視しています。
ADHDをお持ちの方へは、周りの方を交えたコミュニケーション理解が必要と考え、作業だけでなく、ランチ、食事会を通し交流を深めています。また、要望、相談などにすぐお答えできるよう、前向きな考え方をお伝えすることを心がけています。
ASDをお持ちの方は、他者との関わり、意思の疎通を苦手、ストレスと感じることから、毎日の体調、作業管理を行い、作業はひとつずつ指示、健康は体調・顔色・表情・睡眠の質を把握し、個を大切に臨機応変な対応を心がけています。
- 東横システムで働いてみていかがですか?(当事者インタビュー)
- チームの先輩方が障害に理解を示してくれているおかげで、業務でわからない点があれば気軽に質問できる環境があります。指示もテキストで明確にしてくれるので、いつでも見返せるのが助かっています。
プライベートでも先輩方とランチや食事会を楽しんだりと、気軽にコミュニケーションがとれるのも魅力です。自宅から会社まで距離があるため、5月からリモートワークになりましたが、通勤のストレスもなくなり、より集中して業務に取り組むことができています。
チーム全体が本当に優しく、親身に受け入れてくれる素晴らしい職場環境だと感じています。これからも会社のために少しでも早く貢献できるよう努力していきたいと思っています。
- ニューロダイバーシティに取り組み始めたことで、感じた効果について教えてください。
- 得意な作業に特化して依頼することで、高い集中力と高いパフォーマンスを発揮していただけるということを実感しました。
具体的には、通常、1人の作業は設計、実装、テストというように縦軸での作業となりますが、プロジェクトを横断して実装に特化して依頼することで、プロジェクト全体の開発効率を上げることができるのではと考えております。
障害特性は同じ病名であっても千差万別なので、本人と仕事がマッチするかは、実際にやってみないと結局のところわからないと感じます。最初はお互いに負担がかかるのは事実です。適材適所を見つけるまで、管理職同士連携し、根気強く工夫しながら、時間をかけて情報を収集して活躍する場を見いだすことで、これまでには、会社として充てがうことができなかったビジネスモデルを拓くきっかけになると感じます。
- 障害者雇用を考えている方へメッセージをください。
- 通常採用では獲得できないようなスキルを持つ人材と出会えると思います。ただし、それを会社として体感できるのは、1年から2年先となることを経営層、管理監督層が理解しなければなりません。
あとは当事者とコミットして、まずはやってみる!進めてみる!ご参考になれば幸いです。