Interview 障害者雇用企業インタビュー
雇用するまでの流れや、障害者雇用によって企業がどのように成長できたかについて、障害者が活躍する企業にインタビューを行いました。
企業規模
障害種別
内容別
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多様な人材がインクルーシブな職場で活躍することで革新的なアイデアの創出やイノベーションを推進
アマゾンジャパン合同会社小売業- 設立年
- 2000年
- 代表者
- 社長 ジャスパー・チャン
- 従業員数
- 12,000 名以上※
※ 2023 年時点の直接雇用数(フルタイム) - 雇用障害種別
- 非公表
- 事業内容
- 数億種類の商品を取り扱う総合オンラインストアの展開をはじめ、お客様の日々の生活に役立つさまざまなサービスをご用意しています。また、KindleシリーズをはじめとするAmazonデバイスや、プライベートブランド商品など、オリジナル商品も多数取り揃えています。
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インタビューに参加した方の業務
消費財事業本部 ベビー&マタニティ事業部 商品部 部長
People with Disabilities at Amazon Japan 共同代表 森川 卓 - ベビー&マタニティ事業部では商品部の戦略立案や新規事業開発、並びにお取引先様との協業を通じた品揃えの拡大などに取り組んでいます。People with Disabilities at Amazon Japanではアフィニティグループの共同代表として、障害のある社員同士のコミュニティづくりや、全社員への障害理解の促進を目的としたイベント実施などの活動に取り組んでいます。
- Amazonはどのような会社ですか。
- Amazonは世界最大級の電子商取引企業です。Amazonのオンラインショッピングサイトでは、多種多様な商品を取り扱っており、お客様のニーズに合わせたサービスを提供しています。
Amazonの経営理念は、「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」 です。この理念は、1995年の創業以来変わることはありません。この経営理念を実現するために、Amazonは地球上で最高の雇用主となり、地球上で最も安全な職場を提供することを目指しており、その実現のために多様性、公平性、包括性 (Diversity, Equity and Inclusion) を重視しています。
性別、性自認、障害の有無に関わらず、全ての社員が活躍できる環境を整備することが私たちの使命です。
リーダーシップ・プリンシプルの中に「多様な視点を求めること」「学び続けること」が掲げられており、オープンで公平な企業文化の醸成に力を注いでいます。私たちは、多様な人材がインクルーシブな職場で活躍することにより、革新的なアイデアが生まれ、イノベーションが創出されると考えています。全ての社員が自分らしく働ける環境を整えることが、DEIの実現に向けたAmazonの重要な取り組みです。アマゾンジャパンとしても、同様の企業文化と取り組みを推進しています。日本国内でも、多様性を活かしたサービスの提供と、全ての社員が活躍できる環境づくりに努めています。
- 障害者雇用に対する考え方とその実現のために実施していることを教えてください
- Amazonでは、障害者手帳の所有の有無や「障害者である」ということに焦点を当てるのではなく、障害のある社員一人ひとりのニーズを丁寧に把握し、そのニーズに寄り添うことが重要だと考えています。その実現のために
適切な合理的配慮を提供することを心がけています。その中心的な役割を担うのが、Disability Leave Services、通称DLSというチームです。Amazonの障害者雇用に関する取り組みは、DLS、上長、人事部の3者が連携して行っています。DLSチームには障害に関する専門知識があり、個々の社員のニーズを把握し、最適な対応策を提案することができます。一方、上長と人事部は、職場環境やワークプロセスの改善を実行する役割を担います。具体的には、DLSが社員の状況を詳しく把握し、合理的な配慮の内容を提案します。上長と人事部はこれを受けて、実際の職場環境の整備や業務フローの変更などを検討・実施します。このように、DLS、上長、人事部が協力して、障害のある社員一人ひとりのニーズに応じた最適な支援を実現しています。社員の視点に立ち、あきらめずに正しいことを追求するDLSの姿勢と、それを具現化する上長と人事部の連携が、Amazonの障害者雇用の根幹をなしています。一人ひとりの社員が安心して働ける環境を整備することが、この取り組みの主な目的です。
具体的な事例として、視覚優位の特性がある社員に対し、業務指示を口頭ではなく筆記で行うことで業務効率が向上しました。また、聴覚過敏の社員には静かな場所にデスクを設置したり、腰痛のある社員にはオーダーメイドのデスクや椅子を用意するなど、細かな配慮をしています。また、Amazonでは上長に対する研修も行っています。障害のある社員の能力発揮や職業的自立を支援するために、上長がどのように配慮し、サポートすべきかを学んでもらっています。PWD(People With Disabilities)に関する研修などを通じて、上長の理解を深めています。このように障害のある社員一人一人のニーズに寄り添い、安全で働きやすい環境を整備することが私たちの障害者雇用に対する考え方です。
- デジタル関連業務で障害者雇用をしている職種や業務内容について
- Amazonでは、障害の有無に関わらず、全ての職種への応募を歓迎しています。その中で、デジタル関連業務に従事している障害のある社員の職種や業務内容についてお話しします。
例えば、データアソシエイトの役割では、音声データをテキストに変換するトランスクリプションや、そのテキストにメタデータを付与するアノテーションといった作業を行っています。データ分析チームからのリクエストに応じ、
データの機密性を厳重に確保しながら、音声や言語関連のデータ作業に従事しています。これらの業務は、基本的に健常者の方と同等のものをお任せしています。ただ、障害の種類によっては、曖昧なルールに基づいて入力したり、意思決定が必要な業務が得意でない方もいらっしゃいます。その場合は、明確な業務手順書に沿った業務への配置に気をつけるようにしています。このように、Amazonではデジタル関連の業務を含め、多様な職種で障害のある社員が活躍しています。一人ひとりが生産性を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。
- デジタル関連業務で雇用している障害者のキャリア形成のために取り組んでいること
- デジタル関連業務で雇用している障害のある社員のキャリア形成について、私たちが取り組んでいることをお話しします。
まず、通常の社員との1on1の面談は月に1度行っています。障害の程度に応じてその頻度を1週間に1度に増やすなど、定期的に体調や仕事の習熟度、また、本人の今後のキャリア希望について確認を行っています。また、必要に応じてトレーニングの期間を延長し、実際の業務に入ったときに自信を持って対応できるよう配慮しています。その際には、ベテランの社員を専属のサポートとして配置し、困ったときはいつでも確認できる体制を整えています。一方、評価や昇進の制度については、健常者の方と同じ条件を適用しています。チーム内で良いパフォーマンスを発揮できれば、正社員への登用やより重要度の高い業務への配属も検討します。障害の有無に関わらず、能力と実績を評価する仕組みとなっています。
このように、研修支援や昇進機会の提供など、障害のある社員一人ひとりのニーズに合わせたキャリア形成の支援に取り組んでいます。
- 障害者雇用による具体的な効果
- 障害のある社員が活躍することで、私たちは多岐にわたる大きな効果を実感しています。その中でも特に重要な点は、安全で生産性の高い職場環境の実現です。障害のある社員一人ひとりの特性に合わせた適切な配慮をすることで、全社員が最適な環境で業務に取り組めるようになります。例えば、視覚障害のある社員には作業しやすい照明を設置し、聴覚過敏のある社員には静かな執務スペースを提供するなど、個々の状況に合わせた配慮を行っています。このように、障害のある社員のニーズを把握し、それに応じた環境整備を行うことで、全社員の安全性と生産性が向上します。ストレスのない快適な職場環境の実現は、イノベーションの創出や企業文化の醸成にも大きくつながります。さらに、障害のある社員の活躍を通じて、全社員の意識改革も促進されています。互いの違いを理解し、協力してタスクに取り組むことで、多様性を受け入れる企業文化が醸成されます。
このように、障害のある社員の方々の活躍は、単に彼ら個人の成長だけでなく、組織全体の安全性、生産性、イノベーション、そしてより良い企業文化の醸成にも大きな影響を与えています。私たちは、こうした相乗効果を大切にしながら、障害者雇用の推進に努めてまいります。
- 社内の受け入れ体制に関する取り組み
- 社内では「PWD Japan」というアフィニティグループを設置し、障害のある社員同士のコミュニティづくりや、全社員への障害理解の促進に力を入れています。一例として、障害に関する本やビデオをそれぞれ見て、意見交換するBook Clubや、PWD社員もそうでない社員も対象とした、横のつながりを持つためのカジュアルランチを定期的に実施しています。また、今年の5月には、知的障害のある方のアート作品展などを行う株式会社ヘラルボニー代表取締役社長の松田様をお招きし、アマゾンジャパン社長のジャスパー・チャンとのパネルディスカッションを実施し、非常に多くの社員に参加いただきました。また、全社員向けに障害に関する知識を高めるための研修や手話講座の開催など、受け入れ体制の整備にも取り組んでいます。これらの取り組みを通じて、全ての社員が障害のある同僚を理解し、適切にサポートできる環境の醸成を目指しています。
- 障害者雇用を考えている方へのメッセージ
- 障害のある方の活躍の場を広げ、ダイバーシティを推進することは重要です。ぜひ、皆様方の会社でも障害のある方々の活躍の場を広げ、ダイバーシティを推進していただければと思います。
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外部支援を活用して障害者雇用の検討開始からキャリアアップまで実施
株式会社イー・ブレイン情報通信業- 設立年
- 2004年
- 代表者
- 代表取締役社長 守村達
- 従業員数
- 145名
※2024年4月時点 - 雇用障害種別
- 精神障害者2名、知的障害者1名
- 事業内容
- ドキュメントのアウトソーシングサービス
- インタビューに参加した障害当事者の業務内容 ドキュメントサービス事業部 実際に障害者雇用で働く方
- 過去の就業先で動画制作の技術を生かし、本社で動画編集を担当している。
- 株式会社イー・ブレインはどんな会社ですか?
- 当社は2004年3月に設立され、本年2024年に20周年を迎えました。大企業に常駐し、お客様が本来業務に専念できるように、主にドキュメント周りの付帯業務を引き受けるアウトソーシング企業としてスタートしました。「あらゆる企業の働き方改革を支援します」とホームページで謳っているように、お客様から依頼された時間が掛かるお困りごとを解決していくことで、業容を拡大し、現在社員数は男性50名、女性90名、合計140名が在籍し、そのうち約120名が企業に常駐しています。
社員が安心して働けるように、女性活躍推進の「えるぼし」や仕事と家庭の両立支援の「くるみん」の認定を受けています。実際、出産育児を経て今年復職された方が3名、現在育休の方が4名、これから産休に入られる方が3名となっております。ありがたいことに、今まで産育休を経て復職されなかった方は家庭の事情での1名のみで、その他は皆さん職場復帰されています。
AIやDXなど、私たちを取り巻く環境は日々変化している中で、今までは限定されたお客様に対して当社のサービスを提供してきましたが、より多くのお客様に当社の良質なサービスを展開していきたいと考えています。
- 障害者雇用に取り組もうと思ったきっかけ
- 企業常駐が多いことと、障害者に対する知識が乏しく、精神ではなく身体や知的障害者が多いのではと誤解していたことから、はじめは障害者雇用を諦めていました。しかし、法定雇用率をクリアしなければならず、東京しごと財団の職場体験実習面談会をはじめ、外部支援を通して、障害者雇用に取り組もうと考えていました。職場体験実習面談会では、基本的な挨拶、質問に対する回答の適格性、障害の内容と配慮事項を確認しました。
- 障害者雇用のメンバーが取り組んでいる業務
- 現在3名の障害者の方が勤務されています。
1人目は双極性障害の方で、本社の総務部門にて主に庶務の業務を行ってもらっています。社会人経験がなくて新卒同様だったのですが、非常に聡明な方で、さらに素直な性格を受けて、職場体験を経て採用に至りました。
2人目は軽度の知的障害の方で、大学内にある印刷センターで製本などの業務を行ってもらっています。常駐型のアウトソーシングを基本としているため、就業可能な現場や業務の検討、お客様への事前説明で十分にご理解をいただいたうえで、職場実習を経て採用、配属を決めました。いわゆる工場のようなライン作業ではなく、多品種の小ロットで毎回異なる印刷物を制作しているため、作業の切り出し、品質保証などが難しく、お願いする業務を用意する事に現場は非常に苦労しました。現在では、個別の検品項目でWチェックをするなどの対策を行っております。
3人目は双極性障害の方で、この方は本社で動画編集を行ってもらっています。過去の就業先で動画制作の技術をお持ちでしたが、事務職での職業訓練を経て、事務職で求職されていました。当社では、コロナ禍で動画配信の需要が増えて新しいサービスとして取り組んでいたところでしたので、応募者の中にこの方の経歴を発見し、動画編集業務で打診したところ、本人との意向が合致したため採用となりました。現在では、自動車メーカー様の教育用動画や食品メーカー様のレシピ動画などもレギュラーで手掛けたり、PR系の動画を一手に引き受けるなど非常に活躍してもらっています。私も含めたメンバーとのランチや、飲み会などにも参加してチームにとってなくてはならないメンバーとなっています。
人はみんな得意・不得意や弱い点、苦手な点がなどあり、それらを個性と踏まえて付き合っていると思います。もちろん、それぞれの方の障害の特性に合わせて具体的に配慮すべき事項などはありますが、障害をお持ちの方もそれぞれの特性を個性と捉え、他のメンバーと同じように接し、付き合っていくことが大切だと考えております。
- どのような支援を利用しましたか?
- 障害者雇用の経験が無かったので、東京しごと財団の障害者雇用ナビゲート事業を利用しました。専任のナビゲーターの方のアドバイスで、障害者の方への仕事の切り出し方や勤務時間、日数などを社内で検討しました。
そして、職場体験実習などを行いました。知的障害者の方の職場体験実習の際には、ジョブコーチに来ていただいて、実際の職場で業務実習を行い、既存の社員との相互理解を深めるようにしました。この体験は障害者の方への理解を深めるとても良い機会となりました。
受入から定着までは、3か月間のトライアル雇用を支援機関のサポートを受けて実施しました。また、障害の特性を理解する為に産業医よりアドバイスをいただきました。チーム全体で障害の特性を理解し、サポートをする事が大切です。
障害者雇用において受けられる各種助成金も利用しました。トライアル雇用助成金、特定求職者雇用開発助成金、東京都障害者安定雇用奨励金など国や自治体から受けられる金銭的援助も障害者雇用を進める為には大変重要だと思います。
- イー・ブレインで働いてみて、いかがですか?
- 私は前職までは映像関係の仕事をしていたのですが、障害者雇用で映像関係の仕事の求人というのは少ないので、映像の仕事を続けることはあきらめていました。イー・ブレインとの面接も事務職の求人だったのですが、面接中に私の履歴書を見た担当者の方が「イー・ブレインでも映像の仕事をしているよ」とおっしゃり、それがきっかけで3か月のトライアル雇用を経て、動画編集の仕事で採用していただきました。トライアル雇用を始めた頃から映像の仕事の量が増え、私を含めた人数でちょうど人手が足りている状況になりました。私は映像制作の経験があったので、即戦力にはなれたのではないかと思います。
就職支援施設で様々な障害を持った方々と共同で訓練するなかで、障害を持っている方も皆さんそれぞれ違った高い能力を持っているということを知りました。施設の卒業生どうしで集まる機会があるのですが、勤続2年、3年ともなると、グループリーダーや後輩に仕事を教える役割を任されている方もいます。私もそうした皆さんを目標に頑張っています。
前職までは「自分のしたい仕事」にばかり目が行き、「自分に合った働き方」については深く考えていませんでした。それが仕事の質を下げ、自分の体調を悪化させもしたと思います。しかし現在は自分の体調や生活リズムに関して知識を積み重ねていますし、またイー・ブレインの皆さんはもちろん、家族や病院の先生、就職支援施設の職員の方や、自治体の支援員の方など、多くの方と体調について相談ができています。ですから、今が最も自分の能力を発揮して仕事ができていると思います。イー・ブレインでは障害者の方に限らず、様々な生活スタイルの方がそれに合った働き方をしています。障害者雇用の前に、もともとそれぞれの生き方を尊重している企業なのだと思います。自分の障害に配慮していただけて助かるのはもちろんですが、「相談させていただける」ということが、とてもありがたいです。障害者の方が「私にはこれしかできません」と言い、企業の方も「あなたはこれしかできません」というような凝り固まった関係ではなく、イー・ブレインでは「あなたにこれを任せたいけれど、どうすればいいですか?」と聞いていただけますし、私も「こういう配慮をしていただければ、こういうことができます。」と返答するというように、より良い方法を調整していくコミュニケーションがとれていると思います。
- 障害者雇用を考えている方へのメッセージ
- 東京しごと財団の支援により職場体験実習面談会を経験し、障害者雇用に対する考え方が変わりました。具体的には、精神障害の方が多かったので、得意分野に挑戦してもらえれば、活躍の道が開けるのではと考えました。
また、当社が障害者雇用に踏み出すにあたって、法定雇用率や社会貢献の考え方などの社員への周知と協力要請を行いました。人数合わせだけで障害者雇用をすると、うまくいかない可能性があります。その方にとって働きがいがあり、会社にとって有益な雇用でなければなりません。そのためには、どの職場でどのような方が向いているかを、事前に配属可能性のある部門とよく話し合って考えておく必要があります。障害者の方の勤務状態は常に一定ではありません。従って、配慮する社員の負担も日々変わっていくのできれいごとではなくその苦労に報わなければ、障害者雇用はうまく進まないと思います。
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ショートタイムワークの導入で多様な方の就労機会を創出し、企業や地域における人材の有効活用を実現
ソフトバンク株式会社情報通信業- 設立年
- 1986年
- 代表者
- 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
- 従業員数
- 18,889人(2024年3月31日時点・単体)
- 雇用障害種別
- 全体で496名(2024年6月時点)
【内訳】
肢体不自由 34%
聴覚障がい 30%
内部障がい 22%
精神障がい 8%
視覚障がい 6% - 事業内容
- 移動通信サービスの提供、携帯端末の販売、固定通信サービスの提供、インターネット接続サービスの提供
- インタビューに参加した障害当事者の業務内容 ショートタイムワーカー Aさん
- 社内システムを使った検収や請求書処理、請求書等のPDF化、郵便物受け取り業務など
- ソフトバンクはどんな会社ですか?
- ソフトバンクでは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、通信キャリアを超えたさまざまな挑戦を事業を通じて行ってきた会社です。
その過程において様々な企業の合併統合を経て拡大してまいりましたので、過ごしてきた会社の文化自体が違う社員が一緒に働く経験をしてきております。入社の経路も、新卒、中途、お話ししたような合併や統合を経て入社した社員がそれぞれ3分の1ずつほど存在しており、様々な違いを超えてシナジーを出すということを日常の業務の中で経験してきています。
その様な背景から、多様性に溢れた会社であるということをご想像いただけるのではないかと思います。
- ソフトバンクの障害者雇用にはどのような特徴がありますか?
- 正社員の雇用においては、障害には配慮をするけれど、仕事においては遠慮しないことをポリシーにしております。そのため、昇進昇格、給与の条件などはすべて、障害のあるなしにかかわらず同一です。
そのような環境で働くからこそ、障害には配慮して同じフィールドに立っていただくということを大切に考えております。
そして、働きやすさを提供するために、在宅勤務の制度やスーパーフレックスといった制度は全社員共通で使用できるようになっており、障害のある社員もご自身の体調や通院状況などに合わせて使用できるようになっております。
- ショートタイムワークの概要、始めたきっかけを教えてください。
- ショートタイムワークは、何らかの理由によって長時間の勤務が難しく、働く機会を得られなかったという方が週20時間未満という短時間からの就労環境を整えることで、「共に働く」を実現できるダイバーシティな働き方です。
それぞれの特性や経験を生かして働くことで、より多様な方の就労機会を創出し、企業や地域においても人材の有効活用が期待できます。
ショートタイムワークの仕組みについてご紹介します。ショートタイムワークは、まず企業の中にある業務を棚卸しし、その業務を他の方に頼める業務や、実施者が苦手としている業務を切り出します。そして、これらの業務ができる方で短時間から働けるという方に実施していただく仕組みです。
始めたきっかけについてご紹介します。
ソフトバンクでは、2009年から、障害のある子どもたちが生活や学びの場面でどのようにICTを活用するといいか、学校の先生とともに検討し、事例を創出する魔法のプロジェクトという取り組みを行っています。この取り組みを通じ、学習の場でICTの活用が広がってきたと感じる一方、就労において壁のある方がまだまだいるということが分かりました。主要な壁の一つとして、長時間かつ何でもできることが前提となっている日本のメインストリームの働き方だけではなく、短時間から特性や経験を活かして働ける環境を整えることで、共に働ける社会づくりが必要であると感じ、2016年からショートタイムワークを始めました。
- 社内でのショートタイムワークの体制や業務について教えてください。
- ショートタイムワークで障害のある方を採用する場合、部署が求人票を作成し、CSR本部を通じてつながりのある支援機関に求人票を送付し、支援機関を経由してご紹介をいただいています。支援機関には応募や面接の際にサポートいただき、入社後も本人の継続した支援をお願いしており、本人の支援が途切れることがないようにしています。ソフトバンクには専門的な知識を持つメンバーがいるわけではありません。そのため、支援機関と共に継続的なサポートができるよう、ショートタイムワークについてご理解をいただいている支援機関からのご紹介のみとしております。
これまでにショートタイムワークでの就業者数は延べ約80名となっています。その内60名ほどが障害の理由による就業で、その他に子育てや介護、闘病などの理由でショートタイムワークで働いている方がいます。障害の種別は精神障害、発達障害、難病のある方など様々です。短時間から、実施業務が見えているという状況で働けるため、長時間働くことへの難しさを感じている方にも手を挙げていただいています。
業務内容は各部署から依頼のあった業務となります。例えば、資料のPDF化や郵便の受け取り・発送業務、書類整理などの現場作業、もしくはフローが確定している業務でデータの入力やアノテーション作業、データの集計などもあります。他にも特定スキルが必要な業務として、翻訳の業務やプログラミング、イラストレーターなどを活用した業務など実施いただいている場合もあります。
どのように任せる業務を会社の中で探しているかという部分ですが、最初はいろいろな部署に「ショートタイムワーカーを受け入れてもらえませんか?」という形で動いておりましたが、これだとあまり長続きがしませんでした。そのため、「ショートタイムワークを取り入れたい部署はありますか?」という風に全社にお声がけをしたところ、業務を抱えている部署や担当者、管理職の方からご相談がありました。現在は全社に向けて業務仕分けの実施方法を展開しています。部署で業務仕分けをした後、他の人にお願いしたい業務や、部署の担当者が苦手とする業務などを求人票にして出していただいています。
- ショートタイムワークに取り組み始めて、感じている効果などがあれば教えてください。
- 短時間から自身の特性やスキル、経験を活かして働いていただけるため、社内の生産性にも寄与しています。ショートタイムワーカーが、部署のメンバーの一人として働いていることで、インクルーシブな環境も醸成されており、相互理解が深まっていると感じています。部署からは「障害を持つ人への理解が深まった気がします」「全く問題なく一緒に働いてくれています」といった声もあります。
ワーカー自身も収入や働く機会を得られるということとともに、「今までは支援側と支援される側とはっきり分かれていましたが、ショートタイムワーカーとして働いて、初めて対等になった気がしました」といったような声もいただいています。
社会にとっても、労働者数の増加とダイバーシティの推進につながっていると考えています。
- ソフトバンクで働いてみて、いかがですか?
- 私は生まれつき両膝から下の部分が欠損していて、普段は義足をつけて生活しています。義足をつけているので、長時間の移動や満員電車に不安を感じていましたが、在宅勤務やスーパーフレックス制度を活用して、通勤時も電車に座れる時間帯で出勤できるため、足への負担が少なく通勤できるのがありがたいなと思っています。
また、障害の有無に関係なく一人の社員として評価してくださるため、やりがいを持ちながら仕事ができています。
- ショートタイムワーカーと一緒に働いてみて、いかがですか?
- 一緒に働いたワーカーさんが英語のスキルを持っていたため、当時はサービス提案書の英訳対応をお願いしていました。いつも丁寧に確認しながら仕事を進めてくださっていたので、とても助かっていました。自分の持つスキルを生かしながら、無理のない範囲で働けることが、ショートタイムワークという働き方の良い点だと思っています。今後も働き方の選択肢としてあるべきだと思います。
- ショートタイムワーカーの方のコメント(※こちらは記事にのみ掲載しております)
- 「私はここに就労する前、就労を支援する事業所に通っていました。そこで私は、パソコンの資格を何個か取得しパソコンの知識を生かした仕事がしたい、また一定の時間人が多くいる環境に苦手意識があったこともあり仕事が長く続けられる様短い時間から働ける仕事を探していました。そんな時に、就労を支援して下さる事業所の方からこんな仕事の求人があるよとご紹介頂き、現在のショートタイムワークを始めました。
そして現在は、メールや郵便で送られてくる請求書や口振書のPDF化、フォルダへの格納、社内システムを使った検収や請求書提出といった業務を主に行っています。そしてこのショートタイムワークをしたことによって、働くことへの大切さや楽しさ、人がいる環境で一定の時間居ることへの苦手意識も以前より改善され、コミュニケーションもある程度取れる程に自分を変えることができました。
- ショートタイムワークの今後の展開について教えてください。
- 2024年からは、障害のある方の雇用について、法定雇用率の換算対象に週10時間から20時間未満で働く障害のある方も含まれるようになりました。企業が働き方を柔軟にすることで、働く機会を求める人が増える、そんなタイミングであると考えています。
今後も一緒にショートタイムワークの取り組みを進めていただける企業様を増やしていきたいと考えています。ソフトバンクでは、このような働き方を社会全体に広げていくということを目指し、企業や支援機関とともに事例共有などを行うショートタイムワークアライアンスの活動も行っており、このような働き方が当たり前の選択肢の一つとなるよう取り組みを進めていきます。
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得意な作業に特化し、高い集中力とパフォーマンスを発揮していただくことでプロジェクト全体の開発効率が向上
東横システム株式会社情報通信業- 設立年
- 1982年
- 代表者
- 代表取締役 山﨑 孝助
- 従業員数
- 140名(2023年4月時点)
- 雇用障害種別
- 精神障害者2名、発達障害者1名
- 事業内容
- システム及びソフトウェア受託開発(組込み/アプリ/Web)、IT/OA機器販売職及びIT保守サポート職
- インタビューに参加した障害当事者の業務内容 システム開発部門 片野さん
- これまでに、ユーザーインターフェース(UI)の開発や、技術研修、テスターを経験している。これからは、ホームページ制作などWEBデザインのキャリア能力を生かした業務での活躍も期待されている。
- 東横システムはどのような会社ですか。
- 東横システム株式会社は、「独立系」「大手企業のソフトウェア受託開発」「設立以来ずっと黒字経営」を強みとして、東京都大田区の地で、42年目を迎える中小企業です。新卒採用にこだわり、30代、40代の社員層が会社の中核を担い、次代に向けた柔軟な立ち回りができる組織となっていることが特徴です。そのため、人事/業務/福利厚生等でも社員のために合理化を図ることを得意としています。人事をする上でのキーワードは『適材適所』で、今の時代だからこそ組織力アップに効果を発揮しています。
事業内容はソフトウェア開発とIT/OA機器販売事業の2つです。ソフトウェア開発では、組み込みからWEB/アプリと幅広い領域を手がけます。大手企業の受託開発を上流〜下流工程まで一貫して自社内で行っておりますので、その開発環境を活かした継続的な育成が特徴です。
もう1つのIT/OA機器販売事業は、各業界の中小企業がお客様です。PC、サーバー、ネットワーク機器の販売だけでなく、購入後の保守契約も結び、長期的なサポートを提案をいたします。
- 障害者雇用のメンバーが取り組んでいる業務について教えてください。
- 弊社は既に障害者手帳を取得の正規雇用の3名を雇用しております。
2名は精神障害、そしてその2名ともシステムエンジニアとして新卒採用いたしました。
1名は入社10年目となり、開発の現場に設計から実装フェーズを任されるほどに実力をつけております。もう1名は総務に配置転換以降、体調管理、集中力持続時間の管理のもと、総務のお手伝い、営業部門のお手伝い、例えば伝票作成やパソコンキッティング等を担当しています。マニュアルや指示をもとに正確な作業が実行できる特性を活かしております。この能力を活かし、直近ではシステム開発部門のテスターとしても活躍の場を広げております。
3人目については、発達障害です。学歴、職歴によるWEBデザインのキャリア能力を期待し、昨年中途採用し、システム開発部門に配置いたしました。これまでに、ユーザーインターフェース(UI)の開発や、技術研修、テスターを経験してもらいました。これからは、『適材適所』、キャリアを活かしてもらうため、ホームページ制作を任せようと考えております。
- ニューロダイバーシティに取り組もうと思ったきっかけについて教えてください。
- きっかけは2つです。
1つ目は法定雇用率です。段階的な引き上げに伴い、私たち中小企業も社会の公器としてこの雇用率を達成するための雇用を広げる方針といたしました。
2つ目は、経営、管理監督職側のニューロダイバシティ教育です。今の世の中がそのような取り組みをしていかなければならない時代になっているということをキャッチし、体制をつくることが企業の成長の伸び代であると捉えています。経営、管理監督職側の私たちが、障害についての偏見や先入観の物差しではなく、きちんと学び、理解した上で、組織に必要な一員としてマネジメントしていく必要性を実感しています。
- 障害者雇用のメンバーが働きやすい職場環境づくりのため、重視していることは何ですか。
- 障害特性、性格に合わせた対応を重視しています。
ADHDをお持ちの方へは、周りの方を交えたコミュニケーション理解が必要と考え、作業だけでなく、ランチ、食事会を通し交流を深めています。また、要望、相談などにすぐお答えできるよう、前向きな考え方をお伝えすることを心がけています。
ASDをお持ちの方は、他者との関わり、意思の疎通を苦手、ストレスと感じることから、毎日の体調、作業管理を行い、作業はひとつずつ指示、健康は体調・顔色・表情・睡眠の質を把握し、個を大切に臨機応変な対応を心がけています。
- 東横システムで働いてみていかがですか?(当事者インタビュー)
- チームの先輩方が障害に理解を示してくれているおかげで、業務でわからない点があれば気軽に質問できる環境があります。指示もテキストで明確にしてくれるので、いつでも見返せるのが助かっています。
プライベートでも先輩方とランチや食事会を楽しんだりと、気軽にコミュニケーションがとれるのも魅力です。自宅から会社まで距離があるため、5月からリモートワークになりましたが、通勤のストレスもなくなり、より集中して業務に取り組むことができています。
チーム全体が本当に優しく、親身に受け入れてくれる素晴らしい職場環境だと感じています。これからも会社のために少しでも早く貢献できるよう努力していきたいと思っています。
- ニューロダイバーシティに取り組み始めたことで、感じた効果について教えてください。
- 得意な作業に特化して依頼することで、高い集中力と高いパフォーマンスを発揮していただけるということを実感しました。
具体的には、通常、1人の作業は設計、実装、テストというように縦軸での作業となりますが、プロジェクトを横断して実装に特化して依頼することで、プロジェクト全体の開発効率を上げることができるのではと考えております。
障害特性は同じ病名であっても千差万別なので、本人と仕事がマッチするかは、実際にやってみないと結局のところわからないと感じます。最初はお互いに負担がかかるのは事実です。適材適所を見つけるまで、管理職同士連携し、根気強く工夫しながら、時間をかけて情報を収集して活躍する場を見いだすことで、これまでには、会社として充てがうことができなかったビジネスモデルを拓くきっかけになると感じます。
- 障害者雇用を考えている方へメッセージをください。
- 通常採用では獲得できないようなスキルを持つ人材と出会えると思います。ただし、それを会社として体感できるのは、1年から2年先となることを経営層、管理監督層が理解しなければなりません。
あとは当事者とコミットして、まずはやってみる!進めてみる!ご参考になれば幸いです。