Flow 障害者雇用の流れ

「障害者雇用のイメージがわかない…」という場合など、障害者雇用についてどのように進めていけばよいかをご紹介します。

01 相談・情報収集(検討開始)

「はじめての障害者雇用」では、なにから始めるべきかなど、わからないことが多いのではないでしょうか。雇用に踏み切れない段階でもまずは気軽に相談してみましょう。

取るべき2つのアクション

①企業内部での検討

障害者雇用について具体的に検討する前に、まずは社内で雇用の意義について合意を取る必要があります。この段階で重要なことは、障害者雇用を経営課題と結び付けて、いかに経営層が動くのか、また経営層を動かせるのかということです。ここでは、検討の主体を経営層と人事・総務・現場社員の方に分け、具体的にどのような検討が必要かを説明します。

まず、経営層は、障害者雇用を実施する意義を検討する必要があるでしょう。一例ですが、企業の社会的責任だけではなく、人材不足などの経営課題への解決策として障害者雇用を実施しているケースが多くみられます。障害者雇用が自社にとってどのような意義があるのか検討してみましょう。

障害者雇用を開始した理由の例
  • 人材不足への対応
  • 多様な人材獲得による企業価値向上(実際に、多様な人材が集まることにより、アイデアが新たな製品開発に活きたり、業務の再整理に繋がったり、現場の生産性、社員のエンゲージメント、顧客ロイヤリティが高まったりした事例があります)
  • 委託業務の内製化によるコストカット・効率化
  • 企業の社会的責任

次に、人事・総務・現場社員の方は、障害者雇用実現に向けてどのように経営層を動かすのかを検討する必要があるでしょう。早期から意思決定におけるキーパーソンを巻き込むことで、検討がスムーズに進みやすく、継続性も高まると考えられます。

経営層への訴求の例
  • 障害者雇用の効果やコスト、リスクとその回避方法の明示(期待できる効果の例:人材獲得、業務整理、製品開発、生産性向上、マネジメント能力強化など)
  • 外部支援機関への相談で、当事者と触れ合うことで具体的なイメージを訴求
  • 自社の障害者雇用率の状況、社会的意義の説明

社内の検討だけでは自社の経営課題との結びつけや具体的な訴求点を明らかにするのが難しいという場合には、外部支援機関の協力を仰ぐことも一手です。

②外部支援機関への相談

障害者雇用の開始が確定していない段階でも、すでに関わりのある身近な相談相手や障害者雇用のサポート機関に相談をすることが雇用の第一歩となります。どこに相談すればよいのかわからない場合は、以下の外部支援機関の例を参考にしてみましょう。ここでは、はじめて外部支援機関に相談する場合と、すでに採用の検討が進んでいる場合に分けて相談先をご紹介します。

外部支援機関の例

採用の相談

民間機関
就労支援機関(障害者の育成・マッチング) など

情報収集の参考はこちら

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02 業務内容の検討

障害者を雇用するに当たり、どのような業務を任せるのかを事前に検討する必要があります。ここでは、業務内容を検討する際に必要な2つのアクションについて説明します。

取るべき2つのアクション

①障害者特性の理解

障害者に任せたい業務を検討するために、まずは障害者の特性を理解する必要があるでしょう。例えば、精神・発達障害のある方の中には、コミュニケーションを苦手とする方もみられ、会話が少ない業務やチャットでのやり取りが可能な業務で活躍する方が多いです。下記に精神・発達障害のある方が活躍しているケースの多い業務の特徴や業務例を示します。身体障害についても同様に障害特性を理解した上で、業務を検討する必要があります。障害特性について、詳しくは、障害の種類についてをご参照ください。

業務の特徴
  • コミュニケーションが少ない/チャットが可能な業務
  • 高い集中力が必要な業務
  • 定型業務/ルール・手順が
    明確な業務など
具体的な業務例

デジタル業務(データ入力・プログラミング開発など)

高い集中力を生かすことができる、コミュニケーションは比較的少ない

工場での機械操作(製造プロセスでの数ミリレベルの調整など)

高い精度が求められる、コミュニケーションは少ない

デザイナー業務(グラフィックデザイナー・Webデザイナーなど)

チャットでのやり取りが可能、高い集中力で細部までこだわることができる

もちろん、すべての精神・発達障害のある方が上記に記した業務を得意とするわけではありません。そのため、最終的には個人の性格や障害特性によって、適切な業務を検討し、割り当てる必要があります。

②社内での業務ニーズの検討

障害者の特性や活躍が期待できる業務を理解した上で、雇用する障害者の特性を生かせる業務を社内で見つける必要があります。ここでは、業務選定の際に、社内でよくみられる取組の例をご紹介します。

業務選定の例
■ 人事・総務部門から現場へ
採用を担当している人事・総務部門の中で定型的な事務作業を行った後、人材特性が把握できた段階で現場のデータ入力業務へ広げるケースがあります。
■ 現場部署にニーズ調査
データ分析やシステム開発など、特定のニーズに絞り、現場へ調査を行う場合もあります。特に、現在社外に委託している業務や新規に必要となる業務では、人手不足が課題となっていると想定され、受け入れハードルも低くなる傾向にあります。
■ 外部支援機関への相談
社外の意見など違った角度から検討することが近道になることもあります。検討が煮詰まるようなら、外部支援機関に相談してみましょう。

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ショートタイムワークの導入で多様な方の就労機会を創出し、企業や地域における人材の有効活用を実現

大企業身体障害精神障害働き方の多様性
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ショートタイムワークの導入により、企業のみならず社会にポジティブな影響を与えている事例を紹介します。

03 体制・計画づくり

障害者を雇用するに当たり、障害者を雇用する際にどの程度のサポート体制・計画が必要かわからない事業主の方も多いのではないでしょうか。ここでは検討の内容とポイントをご紹介します。

実施すべき3つの検討

①必要な合理的配慮

障害者を雇用する企業には、合理的配慮の提供が義務となっています。合理的配慮には、募集及び採用時に障害の有無にかかわらず均等な機会を確保することに加え、採用後に均等な待遇を確保することや障害者の能力発揮の支障となっている事情を改善することが含まれます。

障害の種類や特性、職場環境によって求められる配慮は異なります。採用段階では、どのような方を雇用したいのかを検討した上で最低限の合理的配慮を検討しましょう。その後、具体的な就業者が決まり次第、その方に合わせた合理的配慮を検討することが重要です。合理的配慮について、詳しくは、障害者雇用促進法をご覧ください。

②体制・計画

次は、①での検討をもとに採用時、採用後の両方について体制や環境づくりを検討します。例えば、採用は誰がどのような形で実施するのか、採用後の相談窓口は誰なのかなど、社内のリソースをどのように活用するか考える必要があります。
ここでは、主に採用後に必要となる体制についてご紹介します。

体制の例
■ ①現場直属の担当
朝会や夕会、日々の1on1での業務確認など、企業内で一般的に行っているサポートを障害のある方には手厚く実施するケースが見られます。
■ ②現場責任者
①で紹介した現場直属の担当のサポートを行い、責任を負います。
■ ③現場以外の相談役(人事・総務部門など)
人事・総務部門の担当者が体調などの相談役を担うことで、安心して日々の業務に従事することができます。社外の専門機関を活用して、ジョブコーチやカウンセリング窓口を設置する企業もあります。

③社外連携体制

社内体制や計画については、必要に応じて外部支援機関の専門家からの継続的なサポートを受けながら検討すると良いでしょう。外部支援機関では企業向けだけではなく、障害者向けの支援もあり、雇用後も障害者の状況を鑑みた上で社内の体制や計画を再度検討することができます。ここでは、相談先の例をご紹介します。

相談先の例
■ 民間の就労移行支援事業所
雇用後に当事者との面談を定期的に行うなど、人材雇用にとどまらないサポートも充実しています。
■ 公的機関

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04 採用

障害者を雇用するに当たり、採用にあたり、社内で雇用水準を定める必要がありますが、何に着目すればよいのか、どこに水準を置くとよいのかが分からない方も多いのではないでしょうか。

実施すべき3つの検討

①採用チャネル

障害者雇用においては多様な採用チャネルがあるため、複数のチャネルを併用するなどして自社に合ったものを選ぶと良いでしょう。また、外部支援機関では、企業や当事者向けの採用イベントなどを提供しています。ここでは、採用チャネルの例と外部支援機関が提供する支援をご紹介します。

採用チャネルの例
代表的なチャネルには、ハローワーク、民間の就労移行支援事業所、特別支援学校、一般の学校、一般雇用や障害者専門の職業紹介業者などがあります。
障害者合同就職面接会・職場体験実習
合同就職面接会では、一度に複数の求職者と話せる機会を持つことができ、効率的に採用活動を進めることができます。また、職場体験実習では、求職者に実際の業務を体験してもらうことで、採用のイメージをつかんだり、企業内に障害者雇用のノウハウを蓄積することにつながります。以下の支援を確認してみましょう。

②選考・面接での確認事項

障害者と一般社員において、採否の判断のポイントは同じであり、基本的には応募者が採用後に発揮できる能力を見出しながら採否を検討することが望ましいでしょう。
その他に障害者を雇用するに当たり確認しておくとよいポイントは、安定就労ができるのか、配慮事項は何かといったことです。採用チャネルなどの外部支援機関と相談しながら確認や要件のすり合わせをしましょう。

選考・面接での確認事項
■ 安定就労
自身の障害特性を理解しているか、必要な配慮を周囲に説明できるか、睡眠や規則正しい生活、通院・服薬などの自己管理ができているかなどの観点から判断します。
■ 配慮事項
人材が求める配慮事項について、機器の導入や業務の工夫で対応可能かなど、自社が対応できる合理的な範囲で要件を調整します。
■ スキル
一般雇用と同様、大学や就労支援機関、過去に所属していた企業での成果などから判断することになります。就労支援機関においては、自分の能力を示す成果物を発表しているケースもあります。
スキルは入社後にも獲得できる一方、安定就労や配慮事項が整っていないと就労継続が困難になるケースが多いため、安定就労と配慮事項を特に重視する企業が多いようです。

一方で、障害の自己理解や職業準備性が基準に満たない場合にも、周囲のサポートで就業できるということを十分に理解した上で採用に臨むことが重要です。精神障害や発達障害のある方の中には、なかなか環境に馴染めず、履歴書の経歴欄に中退や短期離職が並んでいるケースもあるかもしれません。能力に期待できるのであれば経歴は重要視せず、面接等で丁寧に理由を聞いたり実習で見極めたりする姿勢も大切です。

③採用の方法や注意すべき点

面接や筆記試験など、一般的な方法で選考を実施すると良いでしょう。なお、障害の特性上、特に発達障害のある方の中には、対面・口頭でのコミュニケーションに苦手があり、面接ではポテンシャルを把握しきれないケースもあります。その場合は数日~数週間のインターンシップ(実習)を行い、安定して勤務できるか、必要な配慮は何か、求めるスキルを発揮できるか、等を確認するのもよいでしょう。インターンシップをすると、雇用前に障害者と従業員が触れ合う機会も作れるため、受け入れのハードルが下がりやすいという効果も期待できます。
また、採用に当たっては、応募者の障害の特性に応じた合理的配慮が求められます。合理的配慮の指針では、採用の段階では障害者本人から配慮が必要な事項を申し出ることになっていますが、念のため、同意を得ながら採用を進めると良いでしょう。
雇用後の業務選定などをする際に本人の障害について知っておく必要があるため、本人の同意が得られれば面接時に必要な情報を収集・確認できますが、障害の種類や程度で採否を決めるべきではないことには留意しましょう。

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05 職場受け入れ・定着

一般雇用と同様に、障害者雇用でも採用後には受け入れから障害者が職場に定着するまでの支援が必要です。ここでは、受け入れから定着に向けた検討事項を説明します。

受け入れに向けた検討事項

①社内での検討

受け入れの際には、必要に応じて、スケジュール表や作業手順書、作業日誌、健康チェック表、ホワイトボード、就労支援機器などを用意すると良いでしょう。社内のリソースを活用して職場環境の整備をすることが多いかと思います。その際には、雇用する障害者にとって使いやすいものか、確認しながら準備を進めます。また、支援機関から提供してもらえるケースもあるため、相談してみると良いでしょう。
作業手順書の作成は、最初は大変かもしれませんが、作成するうちに業務の再整理につながり現場全体の効率化につながった、新人や中途採用、異動者へのインプット資料としても活用できた、といった企業もあります。

②トライアル雇用

障害者を受け入れて初めて分かることも多いです。また、実際に受け入れてみると現場とのギャップが生まれることもあるかもしれません。受け入れに不安がある場合は、まずはトライアル雇用から開始する選択肢も検討すると良いでしょう。
トライアル雇用では、3か月ほど試用雇用し、雇用する障害者の適性や現場・業務との相性を見極めた上で、最終的に任せる業務を決めていくことになります。

定着に向けた検討事項

外部支援機関との連携

定着に向けては、企業が自ら実施する取組の他にも、支援機関と連携をして必要に応じて外部の支援を受けることも重要となります。

まず、企業が実施する支援は作業習得や職場適応のための支援、心身の健康状況の把握があります。また職場環境や社内の指導・指示系統が機能しているかといった受け入れ態勢の確認も必要です。このような内容を定期的に振り返る面談等を設定しておくと安心でしょう。

また、職場定着のためには外部支援機関との連携も重要です。すでに連携をしている支援機関がある場合は、情報を共有しながら支援を進めましょう。連携が行われていないが支援機関の助言が必要な場合は、本人の同意を得た上で支援機関に協力を依頼すると良いでしょう。

ジョブコーチ
専門家による企業・障害者へのサポートを受けることができます。詳細は以下の支援機関に確認してみましょう。

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得意な作業に特化し、高い集中力とパフォーマンスを発揮していただくことでプロジェクト全体の開発効率が向上

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06 キャリアアップ

障害者雇用は、雇用したら終わりではありません。日々の業務を評価し、長期的なキャリアプランを立てることが重要です。

実施すべき2つの検討

①業務拡大

業務拡大に向けては、適性がある業務を見極める必要があります。そのためには、日々さまざまな業務をする中で、どのような業務を困難なく実施できるのか、どのような業務に苦労しているのかを把握することが重要です。
例えば、下記のような日報で業務適性を測ると良いでしょう。

日付 実施した業務 業務を終えた感想
01月01日 データ入力 特に困難なく実施できた
02月02日 電話受付 上司への取次に苦労した
日付 01月01日
実施した業務 データ入力
業務を終えた感想 特に困難なく実施できた
日付 02月02日
実施した業務 電話受付
業務を終えた感想 上司への取次に苦労した

②能力の評価・キャリアアップ

日々の業務を評価する際には、何ができないかに着目するのではなく、何ができたのかといった得意なことに着目して評価することも多いです。このような評価をすることにより、能力や意向を踏まえて昇進させることもできるため、本人のモチベーション維持や向上につながることも考えられます。
また、社内でのスキルアップを補完するものとして、職業能力開発校などを活用するのも一つの手です。
企業として、障害のある方々に目指して欲しい中長期的なキャリアの選択肢やルートを予め検討しておいてもよいでしょう(例:正社員になる、職域を広げる、リーダーを務める、高度な技術を身に着ける、など)。

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