About 法律や企業の義務について知ろう
障害者に関する法律とそれに伴い生じる企業の義務について知ることができます。
障害者に係る法律の全体像

障害者に係る法律は、障害者基本法を基本的な理念とし、その理念を基に様々な法律があります。
そのうち、障害者雇用に係る法律は、障害の有無に関わらず、個々の能力や希望に応じて、誰もが社会参加できる「共生社会」の実現を目指し、障害者の自立と社会参加を支援し、均等な機会と待遇を確保することを目的としており、「障害者基本法」「障害者差別解消法」「障害者雇用促進法」「障害者総合支援法」が挙げられます。
これらの法令を踏まえ、民間企業等が障害者雇用においておさえるべき5つのポイントを、後段にまとめますので、是非ご確認ください。
障害者雇用に関する主な法令
- ①障害者基本法
- 障害者基本法は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念に基づき、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、民間企業、国・地方公共団体等の責務を明らかにすることを目的とした法律です。
- 【障害者雇用時に把握いただきたい要点】
- 障害者基本法には、障害者雇用に関する具体的なルール等は記載されていませんが、民間企業等は障害者基本法の理念を踏まえ、障害者の特性に合った雇用管理に努める必要があります。
- ②障害者差別解消法
- 障害者差別解消法は、障害を理由とする差別を解消し、障害者が基本的人権を享有する個人として尊重される社会を推進することを目的とした法律です。
- 【障害者雇用時に把握いただきたい要点】
- 障害者差別解消法には、民間企業等は障害者への合理的配慮の提供が義務付けられていることから、障害のある方から社会的障壁の除去について申し出があった場合にスムーズな対応ができるよう、企業にとっての「過重な負担のない範囲」がどこになるのかを、あらかじめ決めておく必要があります。
- ③障害者雇用促進法
- 障害者雇用促進法は、障害者の雇用を促進し、職業の安定を図ることを目的とした法律です。
- 【障害者雇用時に把握いただきたい要点】
- 詳細は後述の「民間企業等がおさえるべき5つのポイント」を参照ください
- ④障害者総合支援法
- 障害者総合支援法は、障害者の日常生活や社会生活を総合的に支援することを目的とした法律です。
- 【障害者雇用時に把握いただきたい要点】
- 障害者総合支援法には、障害者だけでなく、障害者雇用を行う民間企業を支援する福祉サービスが定められています。3年に1回の頻度で、改正されることが決められており、新しいサービスの導入や従来のサービスの撤廃等、変化のある法律のため、改正時には法律をご確認いただくことを推奨します。
- 参考:e-GOV法令検索
民間企業等がおさえるべき5つのポイント

障害者雇用に関して、民間企業等がおさえるべき5つのポイントを下記にまとめます。
- ①対象障害者の雇用義務
- 従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。雇用率は少なくとも5年ごとに設定されます。
令和6年度時点では、従業員が40.0人以上の企業では法定雇用率が2.5%となっており、障害者を1名以上雇用する必要があります。更に令和8年度7月からは2.7%へ引き上げられることになっています。
また、法定雇用率未達成の事業主で一定の基準を下回る事業主に対しては、ハローワークから行政指導が命令されます。なお、行政の指導にも関わらず障害者雇用に適正に取り組まなかった場合は、企業名が公表されます。
- ②障害者に対する差別の禁止と合理的配慮の提供義務
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・障害者に対する差別の禁止
雇用分野において障害者であることを理由とした障害のない人との不当な差別取扱いが禁止されています。具体的には、募集・採用、賃金、配置、昇進、教育訓練などの雇用に関するあらゆる局面で、障害者であることを理由に排除すること、障害者に対してのみ不利な条件を設けること、障害のない人を優先することは障害者であることを理由とする差別に該当し、禁止されています。ただし、このため、職業能力等を適正に評価した結果といった合理的な理由による異なる取扱いが禁止されるものではありません。
・障害者に対する合理的配慮
合理的配慮とは、募集及び採用時においては、障害者と障害者でない人との均等な機会を確保するための措置、採用後においては、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置のことをいい、事業主はこれを講じなければなりません。ただし、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合は、この限りではありません。
【差別の具体例】
- 身体障害、知的障害、精神障害、車いすの使用、人工呼吸器の使用などを理由として採用を拒否する。
- 障害のあることを理由として、賃金を引き下げる、低い賃金を設定する、昇給をさせない、研修・現場実習を受けさせない、食堂や休憩室の利用を認めない。
【合理的配慮の具体例】
- 試験などで拡大読書器を利用できるようにする。
- 試験の回答時間を延長すること、回答方法を工夫すること。
- 文字だけでなく口頭での説明を行う、分かりやすい文書・絵図を用いて説明する、筆談ができるようにする。
- 手話通訳者や要約筆記者を配置・派遣する、雇用主との間で調整する相談員を置く。
- 通勤時のラッシュを避けるために勤務時間を変更する。
- ③障害者雇用納付金の納付
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常用労働者の総数が100人を超える事業主において、法定雇用率が未達成の場合には、障害者雇用納付金を納付しなくてはなりません。なお、納付により障害者の雇用義務数が免除されるものではありません。
- ④障害者雇用に関する届け出
- 従業員40人以上の事業主は、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況をハローワークに報告する義務があります。毎年報告時期になると、対象事業所に報告用紙が送付されます。毎年6月1日時点の雇用状況を報告するため、「ロクイチ報告」と呼ばれます。
- ⑤苦情処理・紛争解決
- 障害者からの相談に適切に対応するための、事業主の努力義務として、相談窓口設置などの相談体制の整備が挙げられます。また、障害者に対する差別禁止や合理的配慮の提供に関する事項について、障害者からの苦情を自主的に解決することも、努力義務とされています。
- 参考:e-GOV法令検索